コピー機の導入時や、オフィス機器を導入する際に度々登場する、「法定耐用年数」と「減価償却」というワード。販売店から話を聞いてもスッとは頭に入りにくく、多くの方はピンとこないパターンが多いのではないでしょうか?
「コピー機に法定耐用年数があることは分かるが、減価償却とはどのような仕組みなのだろうか?」聞き馴染みのないワードのため、このように思う方もいらっしゃると思います。
しかし、コピー機のリース契約時の説明では、減価償却という言葉は必ず出てきます。もちろん事務機器ねっとの営業担当のMFPコンシェルジェからもご説明いたしますが、減価償却の仕組みや計算方法などを知っておくと、コピー機だけでなくあらゆる設備の導入時に話をスムーズに理解することができます。
今まで掲載してきた記事内でも、「法定耐用年数」と「減価償却」についてサラッとご紹介してきましたが、今回はそれらについてさらに深掘りしてご紹介します。
<目次>
・法定耐用年数
・減価償却資産とは一体どのようなもの?
・減価償却の計算方法
・定額法 ・定率法
・定額法と定率法、どちらが良い?
・減価償却の特例
・中古コピー機購入時の注意
法定耐用年数
減価償却資産※の法律上で定められた「使用可能な期間」のことです。
※減価償却資産については後ほどご説明します。
簡単に言い換えると、コピー機の「寿命」ということですね。
法定耐用年数が定められているものは、もちろんコピー機だけではありません。法定耐用年数が定められた身近なものとして、カメラやパソコン(サーバー用のものを除く電子計算機)、エアコン(冷房用・暖房用機器)などがあります。これらは国税庁が定めた減価償却資産の耐用年数表に掲載されています。
・器具・備品:カメラ(5年)、パソコン(4年)、コピー機・複合機(5年)、エアコン(6年)
・車両・運搬具:自動車(2輪・3輪も除く、総排気量が0.66ℓ以下の小型車)(4年)
・構築物・生物:主として金属造のもの・斜降索道設備など(14年)、主として木造のもの・果実棚またはポップ柵(5年)
・牛・役肉用(6年)、豚(3年)、梨樹(26年)、桃樹(15年)
このように器具・備品だけでなく、建物や生物にまで定められているのは驚きですよね。
法定耐用年数は、それぞれの機器によって条件が異なります。コピー機の場合、印刷枚数300万枚を寿命の基準として計算されています。「300万枚という総コピー枚数に達するほど使用する」か、「法定耐用年数の5年」が寿命になります。
新品のコピー機を導入した場合、法定耐用年数は5年になり、この5年を基準としてリース契約が組まれています。
減価償却資産とは一体どのようなもの?
続いて、「減価償却資産」と「減価償却」についてご説明します。
コピー機は、税法で定められている事業用資産の「減価償却資産」に当てはまります。
事業のために使用される器具や備品は、使用年数が経過していくうちに、その価値が低くなっていきます。コピー機のローラーが原因で発生する紙詰まりなど、ゴムや歯車などのパーツ部品は使用すれば使用するほど経年劣化するのです。このような資産のことを「減価償却資産」といいます。
そして、「減価償却」とは減価償却資産に要した費用を全額会計処理するのではなく、その減価償却資産を法定耐用年数に渡って費用を配分して処理するという仕組みです。
例えば、コピー機の導入に100万円の費用がかかるとします。コピー機の法定耐用年数は5年のため、導入した初年度に100万円会計処理するのではなく、毎年20万円ずつ分割して処理することになります。
コピー機のように長期的に使用する機器に対して支払う費用を全額会計処理するのではなく、耐用年数に応じて費用を処理するという考え方が「減価償却」になります。
減価償却の計算方法
減価償却の計算方法は大まかに「定額法」と「定率法」の2種類になります。
定額法
定額法とは、文字通り一定の金額を毎年会計処理していく方法です。
定額法の計算方法は、
① 「導入した際の全額(取得原価)÷法定耐用年数」
となります。こちらの割り算での考え方が1番簡単ですが、
② 「導入した際の全額(取得原価)×償却率」
という計算方法でも求めることが可能です。
償却率とは、オフィスにある減価償却資産の法定耐用年数によって異なります。
別表第八 平成十九年四月一日以後に取得をされた減価償却資産の定額法の償却率表
法定耐用年数 | 定額法 償却率 |
2年 | 0.500 |
3年 | 0.334 |
4年 | 0.250 |
5年 | 0.200 |
6年 | 0.167 |
例えば、導入にかかる費用が100万円のコピー機の場合、下記のようになります。
① 「導入した際の全額(取得原価)÷法定耐用年数」
100万円÷5年=20万円
② 「導入した際の全額(取得原価)×償却率」
100万円×0.200=20万円
定額法の計算は一定の金額のため、シンプルで分かりやすいですよね。
コピー機の場合、使用年数5年目の年は残存価額の1円を残します。残存価額とは、減価償却資産が使用できなくなった時(法定耐用年数が経過した時)の処分価額のことです。
償却しても資産の価値が全くなくなるわけではありませんが、帳簿上の価値を残すために「帳簿価額(※)」をつける必要があることから、最後の年は1円を引いた199,999円で償却が行われるのです。
※減価償却資産の価値が下がるとともに、それまで処理していた減価償却累計額も無くなります。取得原価から減価償却累計額を引いた金額を帳簿価額といいます。
定率法
定率法とは、毎年の残存価額から一定の割合で償却する方法です。
この方法で減価償却を行うと、コピー機を導入した初年度が最も多くの費用(償却金額)を支払うことになります。しかし、使用年数が経過していくにつれ、支払う費用(償却金額)は少なくなる仕組みになっています。
定率法の計算方法は、下記の方法で求められます。
① 初年度:取得価額×定率法の償却率
② 2年目以降:未償却残高×定率法の償却率
上記のように、導入した1年目と2年目以降で計算方法が異なるため注意しましょう。
導入した1年目には、償却保証額という金額が決められており、この金額を下回らないように支払いを済ませなければなりません。仮に下回ってしまった場合は、その年以降の償却額は毎年同額になります。
別表第十 平成二十四年四月一日以後に取得をされた減価償却資産の定率法の償却率、改正償却率及び保証率の表
法定耐用年数 | 定率法の償却率 | 改定償却率 | 保証率 |
2年 | 1.000 | – | – |
3年 | 0.667 | 1.000 | 0.11089 |
4年 | 0.500 | 1.000 | 0.12499 |
5年 | 0.400 | 0.500 | 0.10800 |
6年 | 0.333 | 0.334 | 0.09911 |
例えば、導入にかかる費用が100万円のコピー機の場合、下記のようになります。
まずは、支払額が下回ってはいけない償却保証額を求めましょう。
償却保証額は、
取得価額×保証率
100万円×0.10800=10.8万円
となります。コピー機を定率法で導入する際はこの金額を下回らないようにしましょう。
① 初年度(償却保証額):取得価額×定率法の償却率
100万円×0.400=40万円(未償却残高:100万円-40万円=60万円)
② 2年目以降(減価償却金額):未償却残高×定率法の償却率
2年目:60万円×0.400=24万円(未償却残高:60万円-24万円=36万円)
3年目:36万円×0.400=14.4万円(未償却残高:36万円-14.4万円=21.6万円)
4年目:21.6万円×0.500=10.8万円(未償却残高:21.6万円-10.8万円=10.8万円)
5年目:10.8万円-1円=10万7,999円(未償却残高:1円)
残存価額:1円
ここで注目すべきは4年目以降の定率法の償却率が0.400から0.500に変わっていることです。この0.500という数字は改定償却率に沿って計算されています。2年目以降の減価償却金額が償却保証額(今回の例でいう10.8万円)に満たなくなった年分以後は、この改定償却率が使用され計算されるのです。
定率法も定額法と同じく、最後に1円を残す方法が用いられています。定額法と比較して少し複雑な計算方法となりますが、仕組みを理解できてしまえば簡単です。
定額法と定率法、どちらが良い?
減価償却をする際、法人の場合は基本的に定率法が適用されます。
しかし、「減価償却資産の償却方法の届出書」を申請すると定額法に変更することが可能です。減価償却資産の償却方法の届出書は国税庁のWebサイトから入手することができます。
会社のほとんどは定率法であり、定額法を選択する場合は規模の小さい会社になります。定率法を選択する理由としては、商品を購入できるときはお金があり、可能な限りお金の支出と経費計上を近づけたいからです。また、定率法であれば法定耐用年数でまとめた備品を簡単に計算処理できるためです。
減価償却の特例
実は、減価償却には特例があります。
それは少額減価償却制度といい、一定の条件を満たす法人・個人事業主が「取得価額30万円未満の資産を一括で償却しても良い」という制度になります。
この一定の条件というのは、資本金1億円以下の法人や、従業員数1,000人未満で青色申告(※)をおこなっている個人事業主になります。
上記の条件と30万円未満という条件を満たしているのであれば、無形固定資産(※)もこの特例の対象になります。例えば、ソフトウェアや営業権、商標権などが無形固定資産に当てはまります。
※:確定申告時の手続きの際に事業主は「白色申告事業者」か「青色申告事業者」を選択します。青色申告は白色申告と比較して、書類や帳簿の作成と申告時に手間がかかりますが、青色申告特別控除や損害の繰越控除により、所得税・住民税の税負担を小さくできるというメリットがあります。
※:無形固定資産とは、物理的な形を持たず1年を超えて利用される資産のことです。
中古コピー機購入時の注意
中古でコピー機を購入した際は、価格によって法定耐用年数が異なるため注意しましょう。新品価格の50%を超える中古コピー機であれば、法定耐用年数である5年は適用されます。
しかし、新品価格の50%を下回るコピー機の場合、残りの使用可能年数を見積り、減価償却額を求めなければなりません。製造年月日から数え、法定耐用年数を経過した減価償却資産は、法定耐用年数の20%で計算します。
① 法定耐用年数が経過してしまっている場合
法定耐用年数×20%=耐用年数(使用可能年数)
② 法定耐用年数が何年か経過してしまっている場合
耐用年数-経過年数+経過年数×20%=耐用年数(使用可能年数)
例えば、コピー機の場合法定耐用年数が5年のため、
① 法定耐用年数が経過している中古コピー機
5年×20%=1年
② 法定耐用年数から何年が経過しているコピー機(製造年月日から2年経過)
(5年-2年)+(2年×20%)=3年4ヶ月
このような計算になります。
ちなみに、計算結果が2年未満となった場合、使用可能年数が無条件で2年となります。中古コピー機の耐用年数(使用可能年数)を求めた後は、前述した「定額法」や「定率法」で計算してみましょう。
今回は法定耐用年数と減価償却について解説しましたがご理解いただけましたでしょうか。
筆者は計算が最も苦手で頭が痛い内容でしたが(笑)、深掘りしていくと、あまり複雑ではなく理解して計算することができました。
コピー機の法定耐用年数は5年と定まっていますが、その期間を過ぎたからといって使用できなくなるわけではありません。
ただ、5年という寿命を過ぎてしまうと故障が多発してしまう可能性が高くなります。コピー機の寿命に関しては「複合機の寿命って何年?替え時の適切なタイミングとは」をご覧ください。
法定耐用年数や減価償却について調査しておくと契約時も分かりやすく、どのような仕組みや方法でコピー機が導入されているのか理解を深めることもできます。この機会に法定耐用年数や減価償却について知っておくと損はありませんよね。
また、コピー機同様に、パソコンや自動車などにも法定耐用年数が定まっていることもあり、会社設備の減価償却資産は大事に使用しましょう。
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