複合機のプリンターEDRとは【見張る機能の広がりと、いま確かめること】

「複合機もサイバー攻撃の対象になると聞いて、急に心配になってきた」
「プリンターEDRという言葉を見かけたが、うちの複合機に関係があるのか分からない」
「今の複合機のままで大丈夫なのか、入れ替えたほうがいいのか判断がつかない」
2026年10月、Canonが「プリンターEDR」という技術を発表しました。パソコンやサーバーで使われている「動きを見張って、おかしな動きを見つけたら対処する」という考え方を、複合機やプリンターに持ち込んだものです。
複合機のセキュリティといえば、これまではパスワードやデータの暗号化など「入らせない」対策が中心でした。そこに「入られた後の動きを見張る」という考え方が加わり始めています。
結論から言うと、いまオフィスで確かめたいのは①管理者のパスワードと、インターネットから見える状態になっていないか、②ファームウェアが新しく、メーカーの更新がまだ続いている機種か、③見張る機能や記録の設定が有効になっていて、知らせが誰に届くか、の3点です。新しい機能を待つ前に、今ある機能が働いているかを見ることが先になります。
本記事では、複合機・コピー機の専門店「事務機器ねっと」(運営:株式会社庚伸)のノウハウをもとに、複合機のセキュリティで最近変わったことと、オフィスで確かめておきたい点を整理します。
複合機のセキュリティで起きてきたこと
複合機はネットワークにつながったコンピューター
いまの複合機は、社内のネットワークにつながり、スキャンしたデータを共有フォルダやメールに送り、アドレス帳や利用者の情報を本体に持っています。Canonは今回の発表の中で、プリンターを「認証情報や業務データを扱う重要なIT資産」と位置づけています。
つまり、パソコンやサーバーと同じように、外から狙われる入口にもなりうる機器です。
読み取った書類がネットから見えていた
2013年11月、複数の大学で、複合機で読み取った書類がインターネット上で誰でも閲覧できる状態になっていたことが報じられました。ある大学では、期末試験を受けた学生95人分の答案用紙が閲覧可能だったとされています。
情報処理推進機構(IPA)の「2014年版 10大脅威」でも、複合機がインターネットからアクセス可能な状態で設置されていた事例として取り上げられています。
2016年1月には、JPCERTコーディネーションセンターが、国内の複数台の複合機がインターネットからアクセスできる状態にあることを確認したとして、注意を呼びかけました。初期設定では認証が無効になっていたり、製品共通のIDとパスワードが設定されていたりする場合があることも指摘しています。
脆弱性のお知らせは今も出ている
2026年7月31日には、SHARPが一部のデジタル複合機に複数の脆弱性があるとして、ソフトウェアの更新を呼びかけました。条件がそろうと、本体に保存された画像データに、Webページの認証を迂回してアクセスされるおそれがあるという内容です。
あわせて、ファームウェアのサポートを終えた機種については、回避策を取るか、利用の停止や後継機への移行を検討するよう案内しています。メーカーの更新が続いている機種かどうかが、安全に使い続けられるかを分けることになります。
プリンターEDRとは
EDRという考え方
EDRは「Endpoint Detection and Response」の略で、ネットワークにつながったパソコンやサーバーの動きを監視し、不審な挙動を見つける仕組みです。侵入を防ぐだけでなく、侵入された後の動きを捉えて対処することを目的にしています。
Canonが発表した内容
Canonは2026年10月13日、このEDRの考え方をプリンター向けに展開した「プリンターEDR」技術を発表しました。プリンティング業界では初めてとしています(2026年10月12日時点の同社調べ)。発表で挙げられている働きは次の3つです。
・プリンター内部のイベントや動作を見続け、利用状況や操作の傾向を分析する。1つひとつの操作は正常でも、一連の流れから内部不正や攻撃の兆しを見つける
・脅威を見つけたときに、不審な通信を止めたり、書き換えられた設定を元に戻したりする。検知した内容は本体のパネルで確認でき、メールやログ管理の仕組みを通じて管理者に知らせる
・新しい攻撃の手口を反映した検知のシナリオを追加し、自動で更新する(自動更新は2027年に対応予定)
検知のシナリオには、実際のサイバー攻撃で確認された攻撃者の手口を体系的に整理した「MITRE ATT&CK」という枠組みを使っているとしています。
提供の時期と対象
ヨーロッパ向けとアジア向けの一部機種(いずれも2026年6月発売)には、すでに先行して搭載されています。日本のオフィス向けでは、2027年第1四半期から「imageFORCE」シリーズなどに対象を広げる予定です。
対象には、imageFORCE、imageRUNNER ADVANCE DX、imageRUNNER ADVANCE、imageRUNNER、Satera、imagePRESSの各シリーズの一部機種が挙がっています。現在販売中の機種はこの機能を使える状態で順次出荷され、すでに設置されている機種にもファームウェアの更新で順次提供されるとしています。
ただし、すべての機種が対象ではありません。使っている機種が対象かどうかは、発表の対象製品一覧で型番を確かめる必要があります。
ほかのメーカーにもある「見張る・直す」機能
プリンターEDRという名前ではなくても、複合機の動きを見張ったり、改ざんに気づいて元に戻したりする機能は、各メーカーが以前から持っています。
・HP:電源を入れたときに本体の基本プログラムの改ざんを見つけると、安全な控えから起動し直す機能(HP Sure Start)や、動いている間のメモリを見張り、異常があれば自動で再起動する機能(ランタイム侵入検知)を、HP EnterpriseとHP Managedの機種(対応するファームウェアを搭載したもの)に備えています
・KONICA MINOLTA:2019年12月の発表で、bizhub iシリーズに複合機向けのウイルス検知の仕組みを採用し、入ってくるデータのウイルスやマルウェアを見つけて自動で対応するとしています
・FUJIFILM:起動時にソフトウェアの改ざんを見つけて修復する機能と、許可されていないアプリケーションの実行を防ぐ機能を備え、操作の記録を外部のサーバーへ送ってまとめて分析できるとしています
・SHARP:BP-70M65の取扱説明書には、起動時にファームウェアの破損を見つけて元に戻す設定、同じ相手から一定以上の通信があったときに遮断する「侵入/攻撃検知」の設定、操作の記録を残す「監査ログ」の設定があります
機能の名前や範囲はメーカーや機種ごとに異なります。比べるときは、名前ではなく「何を見張り、見つけたときにどうするか、誰に知らせるか」を確かめてください。
いまオフィスで確かめること
管理者のパスワードを初期値のままにしていないか
IPAやJPCERTコーディネーションセンター、SHARPのお知らせのいずれも、管理者のパスワードを工場出荷時のものから変えることを対策に挙げています。導入したときの業者が設定したまま、誰も中身を知らないという状態も避けたいところです。
インターネットから直接見える状態になっていないか
外から使う必要がないなら、複合機をインターネットに直接つながず、ファイアウォールやルーターの内側で使うのが基本です。社内ネットワークでの設定の考え方は複合機のネットワーク設定で詳しく解説しています。
ファームウェアが新しく、更新が続いている機種か
SHARPの2026年7月のお知らせも、ソフトウェアの更新をお願いする内容でした。更新を当てていなければ、お知らせが出ていても守られません。また、サポートを終えた機種には更新が出ないため、長く使っている機種は、メーカーの更新が続いているかを確かめておくと安心です。
見張る機能と記録が有効になっていて、知らせが誰に届くか
見落とされやすいのがここです。たとえばSHARPのBP-70M65の取扱説明書では、先に挙げたファームウェアの復旧、侵入/攻撃検知、監査ログの設定が、いずれも工場出荷時は「無効」と書かれています。機能があっても、有効にしていなければ働きません。
あわせて、異常を知らせるメールの宛先が誰になっているかも確認してください。プリンターEDRも、見つけた内容を管理者にメールなどで知らせる仕組みです。知らせを受ける人が決まっていなければ、気づくのが遅れます。誰がどの機能を使えるかの管理については複合機のユーザー認証と部門管理も参考にしてください。
返却や入れ替えのときのデータ
複合機の記憶装置には、読み取った書類の画像やアドレス帳、設定の情報が残ることがあります。個人情報保護委員会は、個人データを消すときは復元できない方法で消し、作業を外部に任せる場合は委託先を監督するよう求めています。
リースの機器はリース会社の所有物のため、記憶装置の消去や取り外しをする場合は、リース会社の同意が必要になることがあります。返却の流れは複合機の廃棄・処分方法で整理しています。
入れ替えを考えるときの見方
プリンターEDRが出たからといって、今の複合機をすぐに替える必要があるとは限りません。今ある機種でも、パスワード、ネットワークの設定、ファームウェアの更新、記録の設定を整えるだけで、確かめられることは多くあります。
一方で、メーカーの更新が終わった機種を使っている場合や、リースの満了が近い場合は、入れ替えのときにセキュリティの機能も比べる材料に入れておくとよいでしょう。比べるときの項目は次のとおりです。
・改ざんや不審な動きを見つける機能があるか、それは標準か追加か
・見つけたときにどう対処し、誰にどう知らせるか
・ファームウェアの更新がいつまで続く見込みか
・返却のときにデータをどう消せるか
全体の確認項目は複合機セキュリティ完全チェックリストにまとめています。
よくあるご質問
Q. 今使っている複合機でもプリンターEDRは使えますか
Canonの発表では、すでに設置されている機種にもファームウェアの更新で順次提供するとしています。ただし対象は一部の機種です。発表の対象製品一覧で、お使いの型番が含まれているかを確かめてください。
Q. 社員が数人の事務所でも対策は必要ですか
規模に関係なく、複合機がネットワークにつながっていれば同じ注意が必要です。2013年の大学の件でも、報道ではセキュリティ対策が不十分だった可能性が指摘されていました。まずは管理者のパスワードと、インターネットから見える状態になっていないかを確かめてください。
Q. ほかのメーカーの複合機には同じような機能はありませんか
名前は違いますが、改ざんを見つけて元に戻す機能や、不審な通信を止める機能、ウイルスを見つける機能を持つ機種があります。機種ごとに範囲が違うため、何を見張り、見つけたときにどうするかで比べてください。
Q. 機能があれば何もしなくてよいですか
機能が初期状態では無効になっている機種もあります。有効になっているか、知らせが誰に届くかを確かめて、はじめて役に立ちます。
複合機のセキュリティでお困りなら「事務機器ねっと」にご相談ください
事務機器ねっとは、複合機・コピー機のマルチベンダー販売店として20年目に入りました。8メーカーを取り扱っているため、セキュリティの機能や設定の考え方をメーカーをまたいで比べながら機種を選べます。
運営する株式会社庚伸は、情報セキュリティマネジメントシステムの認証を取得しています。
お取引にあたっての体制
・ISO/IEC 27001(情報セキュリティマネジメントシステム)認証取得
・創業35年以上、サイト運営20年、総販売台数16,000台超
・8メーカー取扱いのマルチベンダー販売店
ご相談はお問い合わせフォームからお気軽にどうぞ。
まとめ
複合機のセキュリティは、入らせない対策に加えて、入られた後の動きを見張る方向へ広がり始めています。いまオフィスで確かめたいのは、次の3点です。
・管理者のパスワードを初期値から変え、インターネットから直接見える状態にしない
・ファームウェアを新しく保ち、メーカーの更新が続いている機種か確かめる
・見張る機能と記録の設定が有効か、知らせが誰に届くかを決めておく
新しい機能を待つ前に、今の複合機に備わっている機能が働いているかを確かめることから始めてください。
この記事の監修者
株式会社庚伸 『事務機器ねっと』 オフィスサポートディビジョン
フィールドエンジニアグループ |
シニアマネージャー
大塚 義美
複合機メンテナンス許可認定
FUJIFILM/Canon/SHARP/EPSON
経歴
複合機のメンテナンスエンジニアとして業界歴26年以上のキャリアから、フィールドエンジニアグループのマネージャーとして事業部を統括。凡そ4万5,000回以上の複合機メンテナンス実績があり、コピー機やプリンターを隅々まで熟知。お客様が抱えられている課題やお悩みに対して真摯に向き合ってサポートすることがモットー。これまでに培った多くの知見と経験を活かした有益な情報を発信いたしますので、少しでもお役立ていただけると幸いです。











事務機器ねっとは「コピー機・プリンターリース価格満足度 第1位」と「コピー機・プリンター販売サイト導入後のサポート満足度 第1位」の二冠を獲得しました。
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