公開日 2025.06.05 更新日 2025.06.09

デザイン事務所向け複合機の選び方や導入前の確認事項を解説!

デザイン事務所では、業務に合った複合機を導入すると、制作効率と出力品質の両立が図れます。しかし、単に高性能な機種を選ぶだけでは、運用面で課題が生じることもあります。出力解像度・色再現性・用紙対応力など、制作物の完成度に関わる機能を見極める視点が欠かせません。

 

本記事では、デザイン業務に適した複合機の選び方や導入時に確認すべき要素について、複合機・コピー機の専門店「事務機器ねっと」(運営:株式会社庚伸)のノウハウをもとに詳しく解説します。

 

h2:複合機とプリンターの違い

プリンターは印刷機能に特化した機器で、単体の動作に特化しているため導入費用を抑えやすい特徴があります。

 

一方、複合機は印刷だけでなく、コピー・スキャン・FAXなどの機能を一台に統合しており、業務効率を高めることが可能です。複数の機能を1台でまかなえるため、機器を分ける必要がなく、設置スペースを抑えることが可能です。

 

複合機であれば一連の業務をスムーズにこなせるため、実務レベルでの生産性向上が見込めます。また、初期費用だけを基準にするとプリンターが有利に見える場合もありますが、長期利用の視点では、複合機のほうが費用対効果に優れた投資となるでしょう。

デザイン事務所に導入する複合機に求めるポイント

デザイン事務所に複合機を導入する際は、業務内容に適した機能を選定する必要があります。特に印刷品質・サイズ対応・色の再現性は、制作物の仕上がりを大きく左右する重要な要素です。また、出力精度だけでなく、対応メディアやソフト連携、導入コストも比較する必要があります。

デザイン事務所向け複合機の選定ポイントは、主に次の8つです。

  • 高品質な印刷性能
  • 用途に応じた印刷方式
  • 用途に応じた解像度
  • 大判出力に対応するA3サイズ機能の有無
  • デザインソフトに対応するPostScript機能の有無
  • 色の再現性を高めるカラーマネジメント機能
  • 特殊用紙やホワイトトナーへの対応力
  • 導入コストと保守体制のバランス

ここでは、デザイン事務所に導入する複合機に求めるポイントを詳しく紹介していきます。

高品質な印刷性能

デザイン事務所にとって、印刷品質は最優先事項です。図面やイメージボードは細部の再現性が求められるため、出力精度が低ければ実務に支障をきたします。低価格モデルでは解像度や階調表現に限界があり、色ムラや線のブレが発生する場合もあるのです。

 

高品質な出力に対応したモデルを導入すれば、グラフィックの再現力が高まり、作品全体の印象が向上します。滑らかなグラデーションや正確な色分布を求める現場では、機器の選定段階で妥協せず、必要スペックを満たすモデルを選ぶことが重要です。

 

価格ではなく、業務で求められる再現性を満たせる性能かどうかが、機種選定の基準です。

 

用途に応じた印刷方式

印刷方式は出力物の性質に応じて選び分ける必要があります。インクジェット方式は色彩表現に優れており、グラフィックや写真を美しく再現できます。グラデーションや色の重なりも自然に出力されるため、繊細な表現を重視する場面で有効です。

 

一方、レーザー方式は文字や図面をはっきり出力できる点が特徴であり、線の精度や印刷速度に優れています。大量印刷や業務用途ではレーザー方式の方が効率的であり、耐久性 も高いです 。

 

業務内容や印刷物の特徴を見極め、両方式の特性を踏まえて最適な選択を行いましょう。

 

用途に応じた解像度

解像度は出力品質に直結する要素であり、作業内容に応じた数値設定が重要です。DPI(Dots Per Inch)とは、1インチ内のドット数を示し、この数値が高いほど精細な出力が可能です。

 

テキスト中心の資料であれば300dpiでも対応可能ですが、図面やイメージ画像などのデザイン用途には最低600dpi以上が推奨されます。写真やフルカラーデザインの出力では1,200dpi以上の機種を選ぶことで、滑らかで正確な表現が実現します。

 

解像度が不足すると、色の境界が曖昧になり、微細なディテールが失われやすくなるのです。用途に見合ったDPIを確保すると、意図通りの印刷表現が再現可能です。

 

大判出力に対応するA3サイズ機能の有無

大判出力への対応は、デザイン業務において極めて重要です。A4対応の機種では、大型図面やプレゼン資料の出力時に貼り合わせが必要となり、見栄えや作業効率に影響します。

 

A3またはA3ノビに対応した複合機であれば、一枚で仕上げられるため、作業時間と品質の両面でメリットがあります。特にA3ノビ対応モデルでは、トンボや裁ち落としも含めてフルサイズ出力が可能です。

 

また、リース契約では、A3機の方がA4機よりコストパフォーマンスが高い場合もあり、長期的な利用にも適しています。図面の見やすさや納品物の品質を重視する場合には、サイズ対応力を必ずチェックする必要があります。

関連ページ:A3カラー複合機

 

デザインソフトに対応するPostScript機能の有無

IllustratorやInDesignなどで制作されたデータを正確に出力するには、PostScript対応が必須です。PostScriptは、文字・図形・画像の情報を忠実に印刷機に伝達する言語であり、複雑な構成でも破綻なく印刷できます。

 

非対応機ではレイアウト崩れやフォント置き換えが起きる場合があり、出力品質が不安定です。Adobe系ソフトを業務で使用している場合には、PostScript機能の有無が仕上がりの品質に大きく影響します。

 

カタログやポスターなど、高精度な再現性が求められる出力物を扱うなら、対応モデルの選定が必須です。

 

色の再現性を高めるカラーマネジメント機能

カラーマネジメント機能は、モニター上の色と印刷結果とのズレを最小限に抑えるために重要です。画面上では正しく見えていても、出力時に色がくすんだり、明度が異なったりするトラブルは少なくありません。

 

出力時の色補正が自動で行われるモデルであれば、調整の手間も減少します。完全な一致は難しくても、再現性の高い出力ができれば、クライアントとの認識違いを防ぎやすくなるでしょう。

 

再印刷や色調整の回数が減ることで、業務の効率化にもつながります。精度の高い出力環境を整えるためには、必ず搭載機能の内容を確認しておく必要があります。

 

特殊用紙やホワイトトナーへの対応力

デザイン業務では、一般的なコピー用紙にとどまらず、特殊な素材への印刷ニーズも発生します。透明フィルムや濃色紙に白インクで印刷したい場合、ホワイトトナー搭載モデルの選定が必要です。通常のCMYKでは白の表現ができないため、表現力を拡張するうえで重要な判断軸です。

 

また、厚紙・和紙・金銀用紙などに対応できる給紙機構や出力設定が備わっている機種であれば、用途が広がります。想定する業務範囲に応じて、出力対応素材のスペックを丁寧に確認しておくことが欠かせません。

 

導入コストと保守体制のバランス

複合機を導入する際は、本体価格だけでなく、保守体制とのバランスも考慮するのが大切です。

 

リース・レンタル・一括購入のいずれの方法を選んでも、トラブル時のサポート体制が業務継続に影響を与えます。印刷枚数が多い場合、カウンター保守契約を活用すると、迅速な対応と部品交換が可能です。月額の費用を明確にしておけば、予算管理もしやすく、長期的に利用する場合にも安心感が生まれます。

 

また、消耗品の供給スピードや問合せ対応の質も、契約前に確認すべき項目です。導入時だけでなく、稼働後の利用まで見据えて最適な環境を整えることが重要です。

 

デザイン事務所のおすすめの複合機3選

複合機の選定は、印刷品質だけでなく、機能の柔軟性やオフィスとの親和性も踏まえて行う必要があります。デザイン事務所では、高精細な出力と色再現性、対応用紙の幅広さが業務成果に直結します。

 

ここでは、信頼性の高いモデルを3機種に絞って紹介するため、自社に合った複合機を選んでください。

 

FUJIFILM ApeosPro C810

富士フイルム ApeosPro C810

 

ApeosPro C810は、販促物や提案資料を社内で一貫して制作したい事務所に最適な機種です。高精細な印刷性能を備えており、ポスター・チラシ・資料など多様な出力形式に対応できます。色の安定性が高く、細部の再現性にも優れているため、視覚的インパクトを重視する現場でも活用できます。

 

また、特殊用紙への対応力やトラブル時の復旧速度にも強みがあり、日々の業務を止めずに利用できる安定性を持っているのです。オフィス用途としての基本機能も充実しているため、デザイン制作と事務作業を同時に行う環境でもスムーズに利用できます。

 

社内で制作物の品質を確保しつつ、外注費や納期のリスクを削減したい場合には、有力な選択肢です。

 

キヤノン imagePRESS C270

キヤノン imagePRESS C270

 

imagePRESS C270は、高画質な製品資料や社内向け印刷物を効率よく出力したい事務所に向いています。卓越した色の再現力を備えており、写真や図版を含む資料でも鮮やかに表現が可能です。

 

特殊用紙や厚紙にも対応しているため、販促物やプレゼン資料など幅広い用途で活用できます。業務用としての処理性能と、一般オフィス機器としての使いやすさを両立しており、日常業務にも馴染みやすい点が特徴です。

 

操作もわかりやすく、現場での導入・教育コストを抑えられる点も評価されています。品質と利便性のバランスを重視する事務所には、継続的に利用できる信頼性の高い1台です。

 

キヤノン imageFORCE C7165F Pro

キヤノン imageFORCE C7165F Pro

 

imageFORCE C7165F Proは、大量出力を安定的にこなす高性能モデルとして、図面印刷や販促物の内製化を進めたい事務所に適しています。最大解像度4,800dpi×2,400dpiと極めて高い精度を誇り、微細な線や繊細な色の階調も明瞭に出力できます。

 

豊富な用紙対応力を備えており、厚紙・長尺・特殊紙など多様なニーズに応じた印刷が可能です。印刷速度も安定しており、月間4,000枚以上の利用でも問題なく運用可能な耐久性を誇ります。

 

プロフェッショナルな仕上がりと業務の効率化を両立させたい環境では、主力機として導入する価値があります。内製体制を強化し、出力の質とスピードを重視したい現場に推奨される1台です。

 

デザイン事務所に複合機を導入する際に確認すること

複合機の導入は単なる設備投資ではなく、制作精度と業務効率の向上に直結する重要な判断です。デザイン事務所では、色再現性や用紙対応など専門性の高い要件が求められるでしょう。

 

そのため、スペックや価格だけで決めず、実務に合致する機能を見極める必要があります。ここでは、デザイン事務所に複合機を導入する際に確認すべきことについて紹介します。

デザイン業に必要な複合機の基本機能を洗い出す

複合機の選定では、用途に応じた必要機能を明確にしておくことが重要です。デザイン事務所では、印刷精度・色の安定性・耐久性といった要素が仕上がりに直結します。

 

具体的には、PostScript対応・600dpi以上の解像度・A3ノビ出力・カラーマネジメント機能などが判断基準です。業務で扱う印刷物の内容に合わせて、必要な解像度や用紙対応力も事前に見極めておきましょう。要件が不明確なまま導入すると、再出力や印刷事故が発生しやすく、作業効率を下げる要因です。

 

目的と機能を一致させることで、選定の精度が高まり、長期的な利用コストも抑制できます。

 

高画質で評価の高いメーカーを比較する

メーカーごとに印刷の仕上がりに違いがあるため、画質を重視する場合はしっかりと比較するのが重要です。デザイン用途では、発色の傾向や階調表現の違いが印象を左右します。

 

富士フイルムは自然な発色と写真画質に強く、キヤノンはシャープな描写と色彩の鮮やかさに定評があります。

 

コニカミノルタは中間調や滑らかなグラデーション表現で高評価を得ているのです。

 

制作物に使用する色や表現したい印象に合わせ、色の傾向が自社のテイストに合致しているメーカーを選ぶ必要があります。サンプル印刷を通して、再現性の違いを確認しながら機種選定を進めるのが効果的です。

関連ページ:鮮やかで美しい写真画質の機種を選ぶ

 

印刷サンプルと相見積を必ずもらう

複合機の出力品質は、スペック表だけでは判断できないため、必ず印刷サンプルを 確認する必要があります。

 

デザイン業務では、色味のわずかな違いが仕上がりの印象に大きく影響します。各メーカーの同一データ出力を比較すれば、階調や輪郭の再現力、発色の傾向などが明確です。

 

また、複数業者から相見積を取得しておけば、価格・保守体制・納期の違いも把握できます。さらに、価格交渉や最適なリース条件の把握にもつながります。価格だけでなく、設置・初期設定・アフターサポートまで含めて検討するのが重要です。

 

導入後のトラブル回避にもつながるため、メーカーショールームでのサンプル出力は必ず行い、実務性能と価格の両面から比較検討をし ましょう。

 

プロダクションプリンターの導入も視野に入れる

高精細な印刷や特殊用紙への対応が求められる業務では、プロダクションプリンターの導入も検討対象です。

 

商業印刷用途を前提としたこのタイプは、表現力・耐久性・出力スピードに優れています。名刺・封筒・カタログ・POP・DM・立体メニュー・横断幕・バナーなど、さまざまなアイテムに対応可能です。

 

一般的な複合機では対応できない厚紙や透明フィルムへの出力に対応した機種もあります 。社内で高品位な販促物を一括で内製化したい場合には、生産性と品質を両立できる選択肢です。

関連ページ:プロダクションプリンター

 

まとめ

デザイン事務所で複合機を導入する際は、色再現性・解像度・用紙対応など、業務に直結する性能を重視する必要があります。メーカーショールームの実機による印刷サンプルを比較し、自社の表現に適した出力が可能かを見極めることが重要です。さらに、高度な表現や多品種対応が求められる場合は、プロダクションプリンターの導入も有力な選択肢となるでしょう。

 

本記事は、複合機・コピー機の専門店「事務機器ねっと」(運営:株式会社庚伸)のノウハウをもとに提供しています。
複合機の選定・導入に関するご相談は、お気軽にお問い合わせください。

 

この記事の監修者

株式会社庚伸 『事務機器ねっと』 オフィスサポートディビジョン
フィールドエンジニアグループ |
シニアマネージャー

大塚 義美

複合機メンテナンス許可認定

FUJIFILM/Canon/SHARP/EPSON

経歴

複合機のメンテナンスエンジニアとして業界歴26年以上のキャリアから、フィールドエンジニアグループのマネージャーとして事業部を統括。凡そ4万5,000回以上の複合機メンテナンス実績があり、コピー機やプリンターを隅々まで熟知。お客様が抱えられている課題やお悩みに対して真摯に向き合ってサポートすることがモットー。これまでに培った多くの知見と経験を活かした有益な情報を発信いたしますので、少しでもお役立ていただけると幸いです。

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コピー機・プリンターリース価格満足度 第1位事務機器ねっとは「コピー機・プリンターリース価格満足度 第1位」と「コピー機・プリンター販売サイト導入後のサポート満足度 第1位」の二冠を獲得しました。

経済産業省認定
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