あなたは普段どのような紙を使用して印刷していますか? オフィスワークですと、ごく一般的なA4のコピー用紙を使用することが多いのではないでしょうか。筆者が勤めていた前職の職場のアニメ業界では、紙がずれないようにするための穴の空いた原画用紙というものや、薄い色のついた作監用紙と呼ばれる用紙を使用していました。現在のアニメ業界ではデジタル化と手描き制作が混合しているので、このような原画用紙などで印刷する機会が多くありました。キヤノンショールームやシャープショールームのレポートでは、大判プリンターやプロダクション機、最新の複合機をご紹介しました。業種や用途によって異なる様々な用紙を使用しており、コート紙やマット紙など多すぎる用紙の種類と、紙に合った印刷を施す複合機に驚かされた記憶があります。
今回はシンプルに「紙」についてご紹介していきたいと思います!
<目次>
・コピー用紙の原材料
・紙の流れ目
・コピー用紙の種類
・非加工紙
・加工紙
・特殊紙
・コピー用紙のサイズ
・A判
・B判
・白色度
・坪量・連量
コピー用紙の原材料
まずはコピー用紙の原材料からご紹介いたします。漠然と紙は木が原材料なのかな〜と思われている方も多いかと思います。紙の原料はパルプです。パルプとは、紙の元となる繊維のことです。主に木材や草などの原料から、植物繊維を取り出します。パルプの種類はたくさんあり、主に木材パルプや非木材パルプ、古紙パルプ、合成繊維パルプなどがあげられ、それぞれのパルプで原料が違います。木材パルプの原料は、馴染みのある針葉樹や広葉樹が中心となってできています。
紙の流れ目
紙は、抄紙機(紙を抄く機械)でパルプを一定に同じ方向に流しながら製造されています。製造する進行方向に繊維が揃いやすく「紙の流れ目」ができます。流れ目は、印刷をする際に大変重要なものになります。紙の流れ目には縦目と横目の二つが存在します。
縦目(T目)
縦目の紙とは、紙の長辺に平行して繊維が流れているものです。ショートグレインとも呼ばれています。縦目の場合は、寸法を「短辺×長辺」と小さい方の数字を先に表記します。
横目(Y目)
横目の紙とは、紙の短辺に平行して繊維が流れているものです。ロンググレインとも呼ばれています。横目の場合は、寸法を「長辺×短辺」と大きい方の数字を先に表記します。
紙はライン上で製造されるため、製造の段階では縦目、横目の区別はつきません。一度紙を巻き取りロール状にした後、裁断の仕方によって縦目横目の区別がつきます。縦目横目の見分け方としては、実際に切り折りすると分かるでしょう。流れ目に沿って平行に紙を破ったり折ったりする場合は、変な方向に曲がることなく紙は破りやすく折りやすいです。
しかし、垂直方向の流れ目に逆らう場合は、途中で曲がってしまったり、ガタガタとした折り目がつきます。また、紙は湿度によって繊維が膨張や収縮をし、その影響で流れ目と垂直方向に伸縮することがあります。雨の多い日など、紙が反って曲がってしまうという現象が起きますがこれが原因です。特に流れ目と平行方向に反りやすくなります。 そのため6月の梅雨の時期などに紙を保管する場合は、保管環境の湿度管理に注意が必要です。
この流れ目が、印刷に関してどのように関わっていくか例をあげてみます。二つ折り、三つ折りのパンフレットや数ページのガイドブックなどは縦目での印刷がほとんどです。この場合の縦目での印刷は、綺麗に折ることができ紙がヘタリにくくなります。また、横向きの名刺には横目、縦向きの名刺には縦目が使用されていたりします。流れ目に合った印刷をすると、名刺もピンとしハリが出るのです。
コピー用紙の種類
コピー用紙と一言でいっても、膨大な情報量になるため、今回はざっくりと世間一般で使用されているコピー用紙の種類をご紹介いたします。
非加工紙
- 普通紙
一般的に使用されているコピー用紙のことを指します。PPC用紙とも呼ばれることがあり、Plain Paper Copierの略になります。Plain Paper Copierの意味は普通紙複写機と訳されてます。 - 上質紙
紙の素材である化学パルプの配合率が100%の紙になります。インクジェットプリンターやレーザープリンター、FAXなどで利用されています。印字はハッキリと美しく再現されますが、写真の印刷はインクが滲んでしまうためあまり向いていません。 - 再生紙
化学パルプ配合率が100%の上質紙と比較すると、白さが際立っていないコピー用紙です。環境に配慮した製品を選ぶという観点もあり、SDGs(※1)の取り組みにもなります。上質紙よりも少し価格は高くなりますが、再生紙を使用する企業も増加しているようです。
※1…SDGs(Sustainable Development Goals)とは、2015年9月の国連サミットで加盟国の全会一致で採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」に記載されている、2030年までに持続可能でより良い世界を目指す国際目標のことです。
加工紙
- 光沢紙
コーティングが施され、表面に光沢のある用紙です。ハガキサイズの写真などを印刷する際にみたことがあるのではないでしょうか。表面の光沢がドラムの熱により溶けてしまい、コピー機の内部に張り付いてしまうこともあるため、レーザープリンターでは使用できません。 - マット紙
光沢紙と同じく紙の表面にコーティングがされています。しかし光沢を出すコーティングではなく、光沢を消すコーティングが施されているため、印刷物は落ち着いた仕上がりになります。普通紙と比較すると、インクの滲みが抑えられるため、ハガキ用や写真用など幅広く使用されています。 - コート紙
光沢紙と同じくコーティングを施した用紙になります。紙の表面にコート剤を塗っているため、表面は滑らかでつやがありサラッとした手触りです。写真やイラスト彩度の高いカラー印刷ができます。見映えもよく、良質な印刷品質を求めている場合に活用する方が多い傾向です。比較的安価で商業印刷によく使用されていることが特徴です。
特殊紙
紙自体に着色や模様などの、特殊な加工を施した用紙。
ベルベットの素材のような“ヴィベールP”や、クロコダイル模様の“クロコグロス”という名称の用紙などがもっと幅広く沢山存在します。そのような特殊用紙を製紙メーカーがそれぞれ独自に開発しています。
コピー用紙のサイズ
普段使用する用紙は、A4、A3、B4…などが主流で聞き馴染みがあると思います。まず紙にはA判と言われるものとB判と言われる2種類の規格があります。A判とB判のサイズについて細かく見ていきましょう。
A判
A判は19世紀末のドイツの物理学者オズワルドによって提案されたドイツの規格であり、現在は国際標準規格ISOで定められた用紙サイズになります。面積の大きさが1平方メートルの大きさの用紙をA0と設定しています。ルート長方形と言われており、縦横比率が「縦:横=1:√2」になっている長方形のことを指します。これは白銀比と言われる比率で、日本人は黄金比よりも白銀比の方が好みの方が多いようです。サンリオのキャラクターである、キティちゃんの顔のバランスも、白銀比の比率とのこと。
用紙規格 | サイズ(mm) | 比較 | 用途 |
A0 | 841×1189 | 1平方メートル | 大判ポスター |
A1 | 594×841 | A0の1/2 | 新聞見開き |
A2 | 420×594 | A0の1/4 | ポスター |
A3 | 297×420 | A0の1/8 | 選挙ポスター |
A4 | 210×297 | A0の1/16 | ノート |
A5 | 148×210 | A0の1/32 | 雑誌 |
A6 | 105×148 | A0の1/64 | 文庫本 |
A7 | 74×105 | A0の1/128 | 小型メモ帳 |
A8 | 52×74 | A0の1/256 | 名刺よりやや小さめ |
A9 | 37×52 | A0の1/512 | ー |
A10 | 26×37 | A0の1/1024 | ー |
A0を基準にして1/2ずつ半分に小さくなっています。初めてA4の大きさを知った際に、210×297という微妙な数字なら200×300この方がキリが良くていいではないか…となぜこんなにも分かりづらい大きさにしたのだろうと思いました。しかし、比率という観点から、私たちの視覚に映るとスッと認識でき、モヤっとしないサイズだと感じます。
B判
B判は1,300年前から使用されている日本最古の和紙の一つとして有名な、美濃紙がルーツとなっています。そのため、A判とは違い国際標準規格ではありません。しかしこちらもA判同様、白銀比で「縦:横=1:√2」の比率になっています。世界の基準ではありませんが、A4ほど大きくなくてもいいかなと思った資料や、なるべくペーパーレスにしたいけど見やすく印刷しなければいけない時などに最適な用紙規格となっています。
用紙規格 | サイズ(mm) | 比較 | 用途 |
B0 | 1030×1465 | 1.5平方メートル | 大判ポスター |
B1 | 728×1030 | B0の1/2 | 大型ポスター |
B2 | 515×728 | B0の1/4 | ポスター |
B3 | 364×515 | B0の1/8 | 電車の中吊り広告 |
B4 | 257×364 | B0の1/16 | 折り込みチラシ |
B5 | 182×257 | B0の1/32 | 教科書・雑誌 |
B6 | 128×182 | B0の1/64 | 単行本 |
B7 | 91×128 | B0の1/128 | パスポート |
B8 | 64×91 | B0の1/256 | POP・カード |
B9 | 45×64 | B0の1/512 | ー |
B10 | 32×45 | B0の1/1024 | ー |
白色度
白色度とは、用紙の性質を表す数値の一つとして、紙表面の白さを光の反射率で表すものです。現在は世界基準規格ISO白色度が採用されています。要するに白色度が高くなるとその分見た目も白く見えるのです。環境に配慮したエコマーク再生紙では白色度が70%ほどのものがあります。普段何気なく使用しているA4のコピー用紙では白色度は80%~95%ほどです。白色度が低いものの例としては、新聞紙の白色度は55%ほどということになります。白色度が0%となると真っ黒で、100%だと真っ白ということなのです。
坪量・連量
もう一つ、コピー用紙を使用する上で選ぶことができるポイントがあります。それは坪量(つぼりょう)です。坪量とは用紙の重量を表す単位のことです。紙1枚の1㎡あたりの重さを表したもので、g/㎡という単位で表されます。通常のコピー用紙の坪量は64~68 g/㎡となります。坪量は1㎡あたりの用紙の重さであるため、用紙の1枚の厚みによって決まってきます。坪量の数値が大きいほど丈夫な紙だということです。紙厚は単位は「mm」・「μm」になります。また、印刷業界では通常「mm」ではなく「kg」表現することが多く、これは用紙の重さを表しています。
用紙の厚みのお話ですが、用紙の基本となる規格の一つなのです。用紙の重さのことを連量と言い、規定のサイズの用紙を1,000枚積んだ時の重さを1連と言います。連量が重くなるほど、用紙の厚さも厚くなります。印刷用紙の用紙サイズは何個かありますが、四六判という表記を基盤にして紙の厚さを表すことが多くなります。坪量と比較してこんがらがってしまうところは、単位がkgなのに重さではないことです。枚数の同じ用紙のサイズが違っていても坪量は同じで、連量は違うということになります。
印刷用紙のあれやこれ、いかがでしたでしょうか? 日常的に使用している紙一枚とはいえ、種類や大きさに幅広い種類がありますよね。自分自身が日常的に使用しない用紙などを、キヤノン様やシャープ様で試しに印刷していただいた際には、やはり感動するものがありました。事務機器ねっとでもコピー用紙やプリンタートナー販売も行っております。また、大判ポスター用に印刷できる大判プリンターや、特殊印刷にも幅広く対応した複合機が揃っております。ご興味がございましたら、ぜひ下記までお問い合わせください!