プリントサーバーの今昔解説

先日、プリンターサーバー付きの複合機を10年以上も使用されていたお客様より、「プリントサーバーは設置しなくて良いのか?」というご質問をいただきました。
10年前に比べ、現在ではオフィスのネットワーク回線も無線(ワイヤレス)化が進み、コピー機にもWi-Fi対応がされています。パソコンもLANケーブルに繋げなくても良いため、フリーアドレスと呼ばれる席を固定する必要がなくて、異なるデスクで働くワークスタイルが可能になりました。このようなことから自席から離れたコピー機に印刷データを無線で送ってプリントすることが、当たり前のことと思っている方も多いでしょう。しかし、この当たり前にできている印刷が、数年前までは当たり前ではなく、地味に面倒臭い操作が必要だった時代がありました。しかも当時のコピー機は1台のパソコンしか接続できなかったのです。今回はその面倒臭い環境を改善した、プリントサーバーの今昔について解説いたします。
プリントサーバー
コピー機とパソコンを使用する際は、USB接続を利用する方法があります。このUSBでの接続方法は、1台のコピー機に対して1台のパソコンの接続しかできませんでした。オフィスという複数の人々が働く環境で、この状況はとても不便で効率が悪いと悩みのタネでした。そこで登場したのがプリントサーバーです。プリントサーバーを使用すると、複数台のパソコンから印刷することが可能になりました。
プリントサーバーとは
プリントサーバーは、コンピュータネットワーク上に配置されたコピー機を、複数のクライアントコンピュータから利用する際に用いられる、制御用コンピュータのことです。プリントサーバーは、複数同時の印刷要求を適切に処理し、コピー機が順序を考えて印刷をこなすための管理を行います。

プリントサーバーの種類
プリントサーバーはWindowsのプリンタ共有機能を利用する場合、専門のソフトウェアを利用する場合、専用機器(ハードウェア)を用いる場合があります。専用機器の場合は、プリンターを接続するためのUSBやパラレルポートと、ネットワークに接続するための無線LANのインタフェースを持つ小型の製品が周辺機器専門メーカーから多く販売されています。プリントサーバーが登場した当時は、オフィスのネットワークに繋がれた汎用のサーバコンピュータに制御用のソフトウェアを導入してプリントサーバーとしていましたが、小型の専用機器が販売されるようになり、さらに小型化されコピー機のケーブル接続口に差し込む変換アダプタのような装置が一般的になりました。
プリントサーバーを導入するメリット
パソコンをコピー機にいちいち接続し直して印刷するという、なんとも面倒臭いことを回避できる機器がプリントサーバーです。プリントサーバーが普及した当時、導入するメリットは2つありました。
複数のパソコンでコピー機を利用できる
やはり、複数のパソコンでコピー機を利用できることが最大のメリットといって良いでしょう。従来のUSB接続の場合、コピー機と印刷操作をしたいパソコンを印刷する度に接続する必要があり、オフィスで作業している社員が、それぞれ印刷したいとなると、ケーブルで繋げるという作業をしなければいけません。また、複合機に一台パソコンを繋げておき、そのパソコンに印刷したい素材を送信してから印刷するという一手間かかる工程がありました。

しかし、プリントサーバーがあれば1台1台コピー機に繋げる必要も、わざわざ接続されているパソコンに素材を送る必要もありません。一度設定してしまえば、自由に印刷をすることが可能です。
社内のどんな場所でもプリンターが利用できる
従来の印刷の場合、コピー機とパソコンをケーブルで繋ぎ、接続してから印刷をしなければなりませんでした。プリントサーバーを導入した場合は、ケーブルという範囲を狭める枷が無くなったため、ネットワークが届く範囲であればオフィスのどの場所でも印刷が可能になりました。最近ではフリーアドレスによる職場環境を採用している企業も多いので、プリントサーバーは欠かせない機器でしょう。

プリントサーバー導入時の3つの注意ポイント

プリントサーバーを導入する際には、いくつかの注意するポイントがあったのです。この注意ポイントに気をつけてプリントサーバーを使用しないと、効率の良い印刷ができないため、必ず確認すべきポイントでした。
適したインターフェースか
確認する
まず注意ポイントの中で重要なのはインターフェースです。プリントサーバーにはUSBタイプとパラレルタイプがあります。コピー機によってそのタイプは違うため、プリントサーバーとコピー機、それぞれのインターフェースをきちんと確認してからプリントサーバーの購入を決定した方が良いでしょう。
有線・無線に対応しているか
確認する
プリントサーバーはLANに接続して使用します。そのためコピー機が有線・無線に対応していることを確認しておく必要があります。 現在販売されているコピー機の大半は対応していますが、念の為確認しておくと良いでしょう。また、購入予定のプリントサーバーの対応規格なども確認してから購入しましょう。
2つの通信ができる
プリントサーバー選び
スキャナ機能が搭載されているコピー機がほとんどだと思います。プリントサーバーは複数のパソコンからコピー機へデータを送るための機器になります。一方スキャナ機能では、複合機からパソコンにデータを送信しなければならないため、この2つの通信ができるプリントサーバーを選ばなければなりません。

現在では最初からプリンタ内部にプリントサーバーを内蔵したコピー機(ネットワーク対応プリンタ)がほとんどで、コピー機にイーサネット端子(Ethernet)やWi-Fi無線LANなどのインタフェースを持つため、直接社内ネットワークへ接続することが可能になります。2010年以降、大抵のコピー機はプリントサーバーが内蔵されており、プリントサーバーなしのモデルはマイノリティとなりました。

家庭用のプリンターでもWi-Fiの普及により、一般家庭でもPCやスマートフォンなどをはじめとする複数の端末でネットワークを構築することが当たり前になったため、家庭向け機種を含むプリンターにLAN接続機能とサーバー機能が内蔵されるようになり、単体のプリントサーバーを用いることは無くなりました。
しかし現在でも、主にクリエイティブワーク向けのコピー機などでは、リップ(RIP=Raster Image Processor)と呼ばれるプリントサーバーが活躍しています。プリントサーバーは単純なネットワーク機能だけでなく、大容量プリントや高速プリントなど大きなデータにも対応することを前提に作られており、プリントサーバーの耐久性も強くなっています。特に、富士フイルムやキヤノンなどのプロダクションプリンターは、高速で稼働し高解像度の滑らかな画質を実現しています。高精細な画質を実現するには専用のプリントサーバーは必要不可欠なのです。このようにコピー機が進化していくに連れて、プリントサーバーはコピー機をネットワークに繋げる役割ではなく、大量コピーや高速プリントに役立つ製品となりました。
今回お客様からいただいたご質問より解説いたしましたが、コピー機やプリンターに関する疑問やご質問がございましたら解説いたしますので、ぜひ事務機器ねっとまでお気軽にお問い合わせください。
この記事の監修者
株式会社庚伸 『事務機器ねっと』 オフィスサポートディビジョン
フィールドエンジニアグループ |
シニアマネージャー
大塚 義美
複合機メンテナンス許可認定
FUJIFILM/Canon/SHARP/EPSON
経歴
複合機のメンテナンスエンジニアとして業界歴26年以上のキャリアから、フィールドエンジニアグループのマネージャーとして事業部を統括。凡そ4万5,000回以上の複合機メンテナンス実績があり、コピー機やプリンターを隅々まで熟知。お客様が抱えられている課題やお悩みに対して真摯に向き合ってサポートすることがモットー。これまでに培った多くの知見と経験を活かした有益な情報を発信いたしますので、少しでもお役立ていただけると幸いです。














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第37号‐24020002
(適用範囲:HCグループ)